鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

銀行の融資はなぜ増えないのか

先日、金融庁が東京都に本店のある信用金

庫の検査を始めるとの報道がありました。


(ご参考→ https://goo.gl/wibwMp


報道によれば、「不動産投資向け融資で、

業者が書類を改ざんする不正があったこと

が明らかになり、金融庁は不正を見逃した

審査体制にも問題がある」とみられている

ようです。


この信用金庫の問題とされている状況につ

いては、まだ、詳細は分かりませんが、同

じく不動産投資向け融資で問題になった、

静岡県地方銀行ほどの悪質な不正はない

ようです。


ただ、同信用金庫は、不動産投資向け融資

に積極的であったようで、そのことが、金

融庁が検査を行うことを決めた要因になっ

たのかもしれません。


では、静岡県の銀行や、前述の信用金庫を

はじめ、なぜ金融機関は不動産投資向け融

資に積極的になるのかというと、金融機関

からみて不動産投資向け融資から得られる

利益が多いということと、一般の会社の事

業と比較して、不動産賃貸事業の収益の見

通しの確実性が高いという点があります。


これに対して、「金融機関であれば、中小

企業に対して融資をすることが使命ではな

いのか」と考える方も多いと思います。


しかし、金融機関が中小企業に対して融資

を増やせない実情があることも事実だと、

私は感じています。


というのは、いくら低金利時代とはいえ、

金融機関が中小企業に対して行う融資の金

利は、調達コスト(=預金金利)が0%で

あっても、事務コストとして1%、信用コ

スト(=貸倒に備えるコスト)として1%

は必要であり、融資利率が2%以上なけれ

ば、採算は得られないでしょう。


仮に、融資額を増やそうとして、多少、事

業に問題のある中小企業に対して融資を行

おうとしても、信用コストをカバーできる

金利を得ることができなければ、損失を増

やすだけになってしまいます。


すべてではありませんが、いまは、中小企

業であっても、1%を割る利率で融資を受

けられることもあり、金利競争が激しいこ

とが、金融機関の収益を悪化させている要

因になっていると私は考えます。


(ちなみに、日本銀行の低金利政策が、金

融機関の収益が悪化させていると説明され

ることがありますが、低金利というだけで

金融機関の収益が悪化することは考えにく

く、十分な利鞘を得られないことが収益を

悪化させていると考えるべきでしょう)


最近、金融機関の経営統合が活発になって

いることも、過当な競争を回避しようとい

う思惑があるからと考えられます。


これに対して、金融機関の数が減ることに

よって、中小企業が融資を受けにくくなっ

たり、融資金利が高くなる可能性がでてき

たりするといわれることがあります。


しかし、銀行は収益機会を逃したくないと

考えているわけですから、中小企業への融

資額を減らそうとすることは考えにくいで

しょう。


ただ、融資の金利については、金融機関同

士の競争が緩和されることによって、高く

なることは考えられます。


とはいえ、現在の融資金利の水準のままで

は、金融機関にとって採算が得られず、融

資を増やそうとするインセンティブが低く

なってしまい、融資が受けにくい状態がさ

らに悪化すると思います。


では、中小企業はどうすればよいのかとい

うと、金利上昇への備えをするしかないと

思います。


それには、業績を高めることが最善なので

すが、それが直ちにできない場合は、少な

くとも、会社の状況をタイムリー、かつ、

詳細(単に、会社全体の業績だけでなく、

部門別、顧客別、地域別などのセグメント

情報を取り入れるということです)な情報

を金融機関に伝えることで、金利が引き上

げられそうになっても、ある程度は避けら

れると思います。

 

 

 

 

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