鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ライザップグループの財務分析

M&Aで急成長してきたライザップグルー

プが、今期の業績予想を修正したことで、

大きな注目を浴びています。


(ご参考→ https://goo.gl/KBUjWY


そこで、ちょっと気が向いたので、同社の

財務分析をしてみました。

 

平成28年3月期

売上収益 539億円

税引前当期利益 28億円

資産 537億円

純資産(※) 102億円

 

平成29年3月期

売上収益 953億円

税引前当期利益 96億円

資産 956億円

純資産(※) 170億円

 

平成30年3月期

売上収益 1,362億円

税引前当期利益 120億円

資産 1,743億円

純資産(※) 284億円


(※)「親会社の所有者に帰属する持分」

を純資産として表示しています。


一般的に、会社が業績予想を修正するとき

は、経営環境の変化などが起きた時に修正

しますが、今回の、同社の業績予想の修正

は、経営環境が変化したというよりも、買

収してきた会社の事業改善が予想よりも遅

れており、かつ、不採算部門を償却するこ

とを決めたことなどの、方針変更によるも

のと言えます。


また、同社の売上高や利益額は伸びてきた

ものの、それはM&Aなどの人為的な意思

決定によるものなので、「順調に業績を伸

ばしている」という説明はあたらず、財務

分析にもなじみません。


私は、積極的なM&Aには否定的ではない

のですが、同社では、ジョンソン・アンド

・ジョンソンの日本法人、カルビーなどで

社長を務めた松本晃氏を平成30年6月に

COOとして招き、同氏の意向で、同社の

積極的なM&Aの方針を修正したと言われ

ています。


このことは、着実に会社を成長させようと

する方針であり、私は評価できることと思

います。


また、今期の業績予想も、33億円の赤字

で、同社の純資産284億円からみれば、

決して致命的とは言えないと思います。


ところが、厄介なことがあります。


それは、同社の資産は、確かに1,743

億円あるかということです。


これは、将来の業績見通しが悪化すると、

資産額を減らさなければならない(→その

分、純資産も減らさなければならない)こ

とになります。


これは、いわゆる「負の暖簾(のれん」と

言われているものです。


ここで、本来なら、将来の業績見通しが悪

化すると、なぜ、資産額を減らさなければ

ならないのかということを説明すべきとこ

ろなのですが、文字数の兼ね合いで割愛し

ます。


荒っぽく説明すれば、業績が下がった会社

は株価も下がるのと同じような理屈とご理

解ください。


そこで、今後、買収した会社の業績があが

らなければ、同社の業績はなかなか上向か

ないことになります。


いちどに多くのM&Aを行ってきたことの

負の影響と言えるでしょう。


とはいえ、同社が買収したジーンズメイト

などは業績が回復しており、私は、決して

先行きが暗いとは考えていません。


同社社長の瀬戸氏も、あえて、方針転換を

打ち出した松本氏を招いており、きちんと

足もとを固めようとしていると思います。


今回の記事の結論は、他社を買収すること

で会社の規模は大きくなるものの、きちん

と業績を回復させることができなければ、

買収した会社に損失が発生してしまうとい

うことがひとつめです。


もうひとつは、このような、人為的な方針

で売上高を伸ばしている会社は、財務分析

にはなじまないので、将来の業績見通しは

経営者の能力を見極めることになるという

ことです。

 

 

 

 

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