鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

役員報酬はなぜ高いのか

先日、日産を再生させた、同社のカルロス

・ゴーン会長が東京地検特捜部に逮捕され

たという報道がありました。


この事件に関する情報は、まだ、少ないの

で、私のような素人はとても論評すること

はできないのですが、この事件に関する専

門家などの論評で、ゴーン氏は、日産を再

生させる過程で多くの従業員を解雇してき

たにもかかわらず、自らは多額の役員報酬

を得ていたことは、あまり好ましくないと

いうようなものを聞き、少し疑問を感じま

した。


私は、ゴーン氏の報酬(平成12年から平

成26年度までの5年度分の報酬が約99

億9,800万円だったにもかかわらず、

同社の有価証券報告書には、約49億8,

700万円と記載されたと報道されていま

す)が適切かどうかは判断できません。


ただ、株式会社の取締役は、会社法上(=

事業に関することがら)は、株主に対して

のみ責任を負う(※)ことになっており、

取締役の報酬を株主が承認している以上、

それは正当なものです。


(※)取締役は、道義的責任、社会的責任

のほか、従業員との関係については労働法

規を守ったり、取引先などとの関係につい

ては民事上の責任もありますが、ここでは

狭い範囲の責任について述べています。


これを言い換えれば、従業員が取締役に対

して報酬が高いと感じていても、それにつ

いて何ら関与できる法律的な根拠はないと

いうことです。


しかし、日本の場合、表向きは取締役を株

主が選ぶことになっていても、従業員から

登用される例が多い、すなわち、実質的な

取締役の指名は、元従業員である取締役が

権限を持っているという会社が多いのも事

実です。


これは、言い換えれば、取締役と従業員の

結びつきが強く、事業が危機的な状況に

なっても、取締役が従業員を解雇をする決

断はしにくい状況にあるということです。


かくいう日産も、ゴーン氏が役員として迎

え入れられる前の社長は、従業員から昇格

した塙氏でした。


当時、日産は有利子負債2兆円をかかえ、

危機的状況にありましたが、自力での再建

は困難との判断から、ルノーの上席副社長

であったゴーン氏に改革を託すことにした

のでしょう。


この時点で、ゴーン氏は「株主に対して忠

実に」日産の改革を進めることになった訳

です。


そして、この表現は誤解を生じやすいこと

を承知で述べると、「従業員のことは後回

し」の改革をすることになったとも言えま

す。


ですから、日産の改革が塙氏からゴーン氏

に移った時点で、改革が従業員には厳しい

ものになることは必然であったということ

です。


そして、これは仮定ですが、ゴーン氏を迎

え入れずに、日産が自力再建を目指した結

果、失敗して会社が存続しなくなったとし

たら、ゴーン氏が受け取った役員報酬以上

の損失が発生した可能性もあります。


そこで、前述の、「多くの従業員を解雇し

たにもかかわらずゴーン氏が多額の報酬を

受け取ることは不適切」という主旨の論評

は、日産自身の判断によって招かれた結果

に対する批判であり、それをゴーン氏へ向

けて批判することはおかしいと、私は考え

ます。


しかし、私も人情として、年間約10億円

の報酬を受け取る役員に対して、会社を解

雇された人から見れば批判したくなるとい

う気持ちは理解できます。


また、従業員と経営者の結びつきが強いこ

とは、事業展開を円滑に行う上でよい影響

をもたらすこともあるのですが、逆に、そ

れが会社の存在を危うくすることもありま

す。


今回の記事の結論は、ややわかりにくいの

ですが、日本の会社の多くは、従業員と経

営者の結びつきが強いのですが、法律上は

会社の意思決定に従業員は権限はないとい

うことです。


これは賛否両論があると思いますが、これ

からは、徐々にゴーン氏のような専門経営

者が登場するようになり、経営者と従業員

との関係は従来とは変わって行くものと、

私は考えています。


なお、これも言及するまでもありません

が、ゴーン氏の容疑が事実であれば、それ

は厳しく批判されるべきことです。

 

 

 

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