鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

目利き能力と情報開示

銀行への批判のひとつに、「目利き能力が

ない」というものがあります。


この批判に、私は、部分的に納得できます

が、納得できない部分もあります。


それは、融資相手の会社の情報開示が少な

いことです。


情報開示とは、財務情報を適正、かつ、適

時に行うことです。


具体的には、前回の決算日以降の月次決算

書と、当月から3か年程度の業績予想(ま

たは、計画損益計算書)を銀行に提出する

ことです。


ところが、「そのようなことを中小企業に

求めることは、負担が重いのではないか」

と考える人も少なくないと思います。


しかし、年に1回の決算書の情報しかない

と、会社の現状をタイムリーに把握するこ

とはできません。


例えば、平成30年12月31日が決算日

の会社の決算書は、多くの場合、平成31

年2月28日までに作成されます。


これを言い換えると、その会社が平成31

年2月28日までに融資申し込みをすると

きは、平成29年12月31日時点の会社

の財務情報、すなわち、最長で14か月前

の財務情報で融資審査をすることになりま

す。


そこで、銀行は、前月時点の月次試算表、

遅くても前々月の月次試算表をもとに、融

資審査を行いたいと考えます。


ところが、月次試算表が3か月以上前のも

のしかない、または、作成していないとい

う場合、銀行は、目利き能力があったとし

ても適切な融資審査を行うことができませ

ん。


また、計画損益計算書も、提出がない場合

は、これまでの業績が順調か、上向きでな

ければ、銀行は現状維持としか判断できま

せん。


それでも、前述したように、中小企業がこ

のような財務資料を作成することは、負担

と考える人は、残念ながら多数派ではない

かと思います。


しかし、私はその考えは誤りであると考え

ています。


私が顧問先をコンサルティングする場合、

少なくとも3か年分の計画損益計算書を作

成し、毎月、計画との乖離を確認します。


なぜなら、私は、月次の資料作成なしに、

的確な経営判断はできないと考えているか

らです。


よくある例えですが、会社経営を船の航海

に例えれば、航路を計画することが計画損

益計算書の作成で、舵をとることが毎月の

業況確認、エンジンを回すことが事業運営

にあたります。


したがって、計画損益計算書を作成せず、

毎月の業況も確認していない会社は、航路

を計画したり舵をとることは負担だからと

いう理由で、エンジンだけを回して航海し

ている船と同じことです。


そのような船を見たら、果たして目的地に

いつたどりつけるのか、もしかしたら、浅

瀬に向かって行って座礁してしまうかもし

れないと考える人も多いでしょう。


そういった面では、銀行が会社を目利きす

る前に、きちんとした経営ができていない

というネガティブな評価をすることになり

ます。


確かに、会社が適切に情報開示を行ってい

ても、銀行の目利き能力がないために、

誤った融資判断をすることもありますが、

情報開示をしない会社が銀行の目利き能力

について批判することは筋違いということ

が、今回の記事の結論です。


また、会社経営とは、事業計画の立案と、

その管理であって、単に、事業を運営して

いるだけでは、会社経営をしていることに

はなりません。


したがって、繰り返しになりますが、月次

での業況の確認や、事業計画を立てること

が「負担」と考えることは、「会社の経営

が負担」と考えていることになってしまい

ます。

 

 

 

 

 

 

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